Sonny Clark Trio | 2つの違いと本当にやりたかったこと

sonny clark trio
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幻の名盤、タイムのソニー・クラーク・トリオ

幻だなんて、今や歴史的名盤の一枚としてよく知られているアルバムですが、実は1966年にこの作品を出していたタイム・レーベルが活動を停止してしまったために長い間廃盤になっていたようで、1975年にテイチクがこのレコードを販売するまで入手が難しかったようです。インターネットも普及前。持っていないソニーファンは喉から手が出るほど欲しかったことでしょう。
でもなんか、PC立ち上げてクリック数回でサブスクでこの作品が聴けてしまう今の時代よりも楽しそうですね。足を使ってレコード屋を回ったでしょうし、手に入れた時、実際に家に帰ってレコードを聴いた時の感動はきっと言葉では言い表せない程でしょうね。

5番目のリーダー作

このレコードは、1960年3月23日ニューヨークにて録音。1963年に31歳の若さで早世してしまうまで、正規に発売されたリーダー作としては6作品中5番目の作品です。後にリリースされる未発表盤を含めると7番目のリーダーセッションです。この盤以外は全てブルーノートからリリースしています。わずか5年ほどの短い期間。もっとたくさん作品を残してほしかったですね。

リリースの順番

  1. 1957年 – Dial “S” For Sonny(Blue Note)
  2. 1957年 – Sonny’s Crib(Blue Note)
  3. 1957年 – Sonny Clark Trio(Blue Note)
  4. 1958年 – Cool Struttin’(Blue Note)
  5. 1960年 – Sonny Clark Trio(Time)
  6. 1961年 – Leapin’ And Lopin’(Blue Note)

当時未発表
1957~1958年録音 – Sonny Clark Quintets(Blue Note)→1976年に東芝EMIよりリリース
1959年録音 – My Conception(Blue Note)→1979年にキングよりリリース

同じタイトルの作品が2つ

サイドマンとしても実に演奏がうまく、他の楽器を引き立てつつ、自分の個性もしっかり表現することの出来るピアニストなので、リーダー作と行ってもブルーノート・オールスターズの演奏の中では、当然引き立て役にも回る訳で、それもそれで素晴らしい演奏なのですが、やはりソニー・クラークの魅力により迫る事が出来るのは、ブルーノートとタイムからリリースした同タイトルのピアノ・トリオ作品『Sonny Clark Trio』ですね。

ブルーノート盤とタイム盤の違い

ブルーノートからのリリース作品もクラーク節炸裂の大名盤になっていますが、曲はスタンダード中心の内容でした。ある意味演者の個性をより明確にするという意図もありソニー・クラークの人気を引き上げた作品でもあると思いますが、聴く側を考慮した選曲とも言えるかもしれません。それに対しこのタイム盤は全て本人のオリジナル曲。よりソニー・クラークというミュージシャンとしての音楽性と創造性が如実に現れている作品になっていると言えるかと思います。

正直タイム盤はブルーノートの録音に比べると全体的に音が曇っているような感じで、ベースとドラムが引っ込んでしまっていて物足りない感はあるのですが、逆にそれがアンダーグラウンド感を醸し出していて、なんだか無意識に没入出来る感がありますね。秘密の演奏の記録みたいな。

本人も影響を受けていると言っているバド・パウエルの流れを組むバップスタイルをベースとして、グイグイ引っ張られる独特の重いタッチと、強弱の表情豊かに時折ビシバシ完璧なタイミングで叩くシングルトーン。グルーヴィーでアーシーでブルース。

共演メンバー

ブルーノートでのトリオは、ポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズの当時マイルス・デイビスの鉄壁のリズム隊でした。
対してこちらのトリオのベースは、この時40才くらいでベテランのジョージ・デュヴィヴィエ。あまり聞かない名前ですが過去にバド・パウエルのバンドでベースを弾いており、『ジ・アメイジング・バド・パウエル第2集』では編曲も手掛けています。ソニー・クラークからすれば憧れの大先輩の一人だったのではないでしょうか。そしてドラムはリーダー作でもバックメンバーとしても一流の腕を見せるジャズ界の巨人の一人、マックス・ローチ。この作品が音質のせいだけではなく、ソニー・クラークの良さが全面に出ているのは、彼らの俯瞰できる卓越した演奏力と懐の深さでしょう。

なぜ、この盤だけタイムからなのか

それにしてもなぜこの盤だけタイムからなのか、1959年に立ち上げたばかりのタイムのプロデューサー、ボブ・シャッドが作品をリリースしたくてあちこち誘っていたのか、ブルーノートに何か内情があったのか、マックス・ローチからの縁であったりするのかもですが、変に想像してしまうだけで調べてみても真相はわかりませんでした。ただ、未発表リーダー作が過去に2つあり、このアルバムでも演奏しているオリジナル曲が、妥協を知らないプロデューサー、アルフレッド・ライオンによってお蔵入りにされてしまっているので、どうしても作品として残したかったのかもしれません。ブルーノートとは別の所で誰かの機嫌を伺うことなく、思うままに自由にやってみたかったのかもしれませんね、本当にやりたかったことを。そんな風に思ってあらためて聴いていると、なんか楽しいです。


Sonny Clark Trio
ソニー・クラーク・トリオ

Time

  1. Minor Meeting
  2. Nica
  3. Sonny’s Crib
  4. Blues Mambo
  5. Blues Blue
  6. Junka
  7. My Conception
  8. Sonia

Sonny Clark (p)
George Duvivier (b)
Max Roach (ds)

Produced by Bob Shad
Engineer John Cue
Mastered by Hal Diepold

Recorded in New York City, March 23rd, 1960.

sonny clark trio

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この記事を書いた人

海と山と畑に囲まれて、糸島の片隅で音楽を聴いています。中古オーディオとレコードの買取、整備、販売を仕事としています。オーディオマニアではありません。ただの音楽好きです。

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