Miles Davis Quintet – Round About Midnight | ミュートが渋すぎ、実際5部作

Miles Davis Quintet - Round About Midnight
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コロムビアへ移籍後の第1作目

最初からマイルスのミュートが渋すぎですね。トランペットってこんなにデリケートな楽器だったっけっていつも思います。1956年にプレスティッジからコロムビアへ移籍後の第1作目。第一期クインテットでの作品です。

プレスティッジとの残っていた契約

移籍したきっかけは1955年に出演したニューポート・ジャズ・フェスティバル。このときの演奏が話題になり、マイルスの人気も絶好調の時期でした。コロムビアはマイルスに移籍の話をもちかけ、プレスティッジよりも大きなメジャーレーベルでもあるので本人も乗り気。でしたがこの時まだプレスティッジと間にあと1年間、アルバムにして4枚分の契約が残っていました。それでたった2日のセッションで録音されたのが、『ワーキン』『スティーミン』『リラクシン』『クッキン』の名作の4枚。なぜこんなにも素晴らしいアルバムがそんなやっつけで生まれたんでしょうね。凄すぎです。
しかもプレスティッジのこの作品の売り方がまた巧妙で、マイルス人気が上昇中というのとCBSの宣伝力を利用して、1年に1枚ずつ発売するというやりかた。4枚目が発売されたのは1961年です。大成功。なんというか、今では考えられない話。

マラソンセッションと同じクインテット

このアルバムはその4部作の製作中、まだプレスティッジとの契約が残っている中で録音されました。プレスティッジとの契約が終わるまでは発売しない約束で。その話もなんか凄いですよね。なので同じクインテット、同じ時期のこの作品をもって5部作とも言えるアルバムです。

演奏も素晴らしいです。クールで場を一瞬で染めるリラックスした雰囲気。まったく嫌味のないグルーブ。聴けば聴くほどに改めて良さに気付きます。基本一発録りなので変に作り込まれていない分潔さが心地良く、余計なことを考えずに素直に聴けてしまう。

コルトレーンの成長

反面、面白いのがジョン・コルトレーンの演奏がこの時期まだ今一歩だったりするところ。ちょっとふわふわしていて地に足が着いていない感じ。自信のなさを感じさせる。そうそうちなみにこのアルバムの録音は約1年間の隔たりがある3回のセッションで構成されたもの。2曲目は1955年の10月27日、1曲目と3曲目は1956年9月10日、B面の3曲は1956年6月5日に録音されたものです。なのでまだ若いコルトレーンのこの1年での成長っぷりがこの1枚のアルバムでもはっきりわかるのも面白いですね。

そしてこの数年後コルトレーンはマイルスの元を離れ、それまでの既成概念やスケールを破壊し、独自の形で再構築していく怪物に進化していくのです。もちろんこの時の他のメンバー、レッド・ガーランド、ポール・チェンバース、フィリー・ジョー・ジョーンズも、歴史に名を残す演奏を数々残していく巨匠に。マイルスはもはやジャズの枠を超えて音楽そのものを新しい方向へ導いていく宇宙人に。その進化もすごい。面白い。


Miles Davis Quintet – Round About Midnight
マイルス・デイビス・クインテット – ラウンド・アバウト・ミッドナイト

Columbia

  1. ‘Round Midnight
  2. Ah-Leu-Cha
  3. All Of You
  4. Bye Bye Blackbird
  5. Tadd’s Delight
  6. Dear Old Stockholm

Miles Davis (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe” Jones (ds)

Produced by George Avakian

Recorded 1955.10.27 / 1956.6.5 / 1956.9.10

Miles Davis Quintet - Round About Midnight

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この記事を書いた人

海と山と畑に囲まれて、糸島の片隅で音楽を聴いています。中古オーディオとレコードの買取、整備、販売を仕事としています。オーディオマニアではありません。ただの音楽好きです。

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