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QUAD 11L Classic Signature スピーカー、出張買取させて頂きました。
シリーズ第3世代目
クオードというと真っ先に頭に思い浮かべるのはヴィンテージ。小型のアンプの33や44、そして電源付きの静電型スピーカーでしょうか。あまり小型スピーカーのイメージはありませんでしたが、クオードが初めてブックシェルフを発売したのは1995年、10Lというモデルです。当時小型スピーカーの開発のノウハウはなかったようで、設計はスペンドールに依頼したようです。次の2002年(日本は2004年)に発売になった11Lは元セレッションの技術者が開発に関わっているようです。1950年代の初期の静電型スピーカー ESL-57はBBCモニタースピーカーとして採択されたようですが、ブックシェルフもBBCモニター系の流れを組んでいるという事ですね。
今回お譲り頂いたこちらのスピーカーは2011年の発売で、音響デザインディレクターにピーター・コモー氏を迎え製作されたシリーズ第3世代目。前身の11Lの後継機です。
ピーター・コモー氏の経歴
ピーター・コモー氏は、元々は普通のオーディオファンで、オーディオ専門店で10年近くセールスを担当していたようです。そしてお客さんの望む手頃な価格の優れたスピーカーを作りたいと考えるようになり、1978年にHeybrookというスピーカーブランドをスチュアート・ミー氏と共同設立します。最初に設計したスピーカーはHB2で1979年に発売。これが大成功してイギリスのハイファイ企業の新しい波の先駆者に加わります。1981年には3ウェイのHB3を設計して高い評価を得ましたが、価格が高くなってしまい最初の夢からは遠ざかってしまいます。そして初心に帰り設計したのが1983年発売のHB1。これがWhat Hi-Fi?で83年、84年、85年と連続で最高のスピーカとして賞を受けるのでした。日本には全然入ってきていないようですが、聴いてみたいですね。
数々の実績を残した後、1999年には音響設計ディレクターとしてMissionに入社。その後一度は会社を離れ評論家として活動しますが、2009年に再びIAG (International Audio Group) の傘下のMissionに入社します。そして個々のブランドの歴史とデザインの整合性を維持する必要性に深い敬意を払いつつ、QUADも含むグループの全体的な音響設計に携わるようになります。
思惑通りの設計
前オーナー様はちょっと元気が足りないということで、別のスピーカーを検討するために手放されたようですが、確かに元気は足りない印象。でもけっしてウィークポイントではなく、これは逆にストロングポイントでもあって、飛び抜けているところがない分、そもそもそれほど大きい音量でガンガン聴く前提でないブックシェルフとしては、とても控えめで聴くソースも選ばないので好印象とも思えます。誠実な音。あえての思惑通りの設計なのかなと感じます。
いろいろとこのスピーカーについてのレビューを見ていると、アンプを選ぶという意見も多数見られましたが、その通りかなとも思いました。やや重心が低めではあるけれどもそれほど下まで輪郭がなく、高域はたぶんアンプ次第でキツくもなるし足りなく感じる場合もあるかもしれません。中域は癖がなくまとまりも良いので、どこをどうしていくかは好みでもありますね。
そうそう、なんだか嬉しくなってしまうのは、その伸びしろを感じてしまうところです。エイジング次第で落ち着きもだいぶ変わっていくらしい。いろいろと試すにも高価過ぎないので、人を選ばない一般のユーザーライク。いいスピーカーですね。まさにピーター・コモー氏の真骨頂。
