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1957年録音のブルーノート唯一のリーダー作品。この時期既にプレスティッジと2年間契約を結んでおりましたが、1956年の終わりか翌年始め頃に、アルフレッド・ライオンとブルーノートでアルバムを作るという約束をして前金をもらっていたのでした。それからかなりの時間が経ちましたがその約束を守り、ピアノのケニー・ドリュー、トランペットはブルーノートと契約したばかりのリー・モーガン、マイルス・クインテットの同僚のベースのポール・チェンバースとフィリー・ジョー・ジョーンズ、そしてこのアルバムを作ることになったきっかけのトロンボーンのカーティス・フラーというスーパー・オール・スターズの面々で録音を行います。
コルトレーンと言えば、60年台のインパルスからリリースされた作品の印象が強いですが、やっぱりレーベルの色というものは出るもので、これはブルーノートだなという感じです。演者個々のインスピレーションやその場の自由な空気みたいなところを、うまく引き出しながら100%以上の作品にしてしまうのは、やはりアルフレッド・ライオンの手腕と、ブルーノートというレーベルが常にいつでも準備OKな姿勢と雰囲気を創っていたからなのかも知れません。
何故、お金が必要だったのかはちょっと不純な動機ではありましたが、マイルス・デイビス・クインテットでの緊張感のある毎日の息抜きの為にアレが必要で、友達のトロンボーンのカーティス・フラーがブルーノートで録音する約束をしてお金を貰おうとアイデアを出すのでした。少し前に「MILES AHEAD マイルス・デイヴィス 空白の5年間」という映画が公開されておりましたが、どんなやり取りが行われていたか、この映画を見ると少し雰囲気が掴めるかもしれません。マイルスの映画ですが新人という事でコルトレーンも少し登場します。
お金がないとか借金とか、連想するものは苦しいイメージだけですが、もしかしたらこの時代のお金という物はもっと気軽なもので、入っては消え、消えても働けばなんとかなって、また偶然入って、みたいな事で社会の中で循環して、循環することで社会全体が潤い、国が成長する事が出来たのかも知れません。アメリカの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーも本の中で語っていますが、そもそも「貧しいことは不幸ではない」そんな時代だったのかも知れません。お金をどう使うべきか、この時代の人の方が現代の人よりよっぽど賢かったのかもしれませんね。
話が逸れましたが、そんな借りを返す為に作ったこの作品。動機はともあれ5曲中4曲はコルトレーンの書き下ろし、得意なクインテットの構成、バックは気心のしれたドラムとベース、そして才能あふれる3管のメンバー、やる気十二分だったのでしょう。素晴らしい作品です。
John Coltrane – Blue Train
ジョン・コルトレーン – ブルー・トレイン
Blue Note
- Blue Train
- Moment’s Notice
- Locomotion
- I’m Old Fashioned
- Lazy Bird
John Coltrane (ts)
Lee Morgan (tp)
Curtis Fuller (tb)
Kenny Drew (p)
Paul Chambers (b)
Philly Joe Jones (ds)
Produced by Alfred Lion
Recorded by Rudy Van Gelder
Recorded 1957.9.15